過剰なオフィス供給を尻目に、高級住宅が都心複合開発を牽引

この記事は2024年6月21日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「過剰なオフィス供給を尻目に、高級住宅が都心複合開発を牽引」を一部編集し、転載したものです。

2023年11月に開業した麻布台ヒルズ(港区)では、今後の竣工分を含め約1,400戸の住宅が供給される予定である。日本一高いビルとなった森JPタワーに入るアマンレジデンス東京の最上階の物件は高額で、200億円以上の分譲価格(坪単価4,400万円以上)とも報じられている。

23年11月に竣工した渋谷駅至近の渋谷サクラステージ(渋谷区)でも、分譲マンションや家具付き短期賃貸住宅が供給され、募集中(24年6月時点)の分譲賃貸物件の賃料も坪単価3万円前後と高額である。都心で大規模ビルの大量供給が続くなか、過剰感のあるオフィスとは対照的に、需要が堅調な高級住宅が複合開発で注目されている。

不動産経済研究所が公表する23年度の東京23区内における分譲マンション発売データから、価格帯別に、販売開始月に売り出した物件のうち成約できた比率である「初月契約率」を集計した。すると、初月契約率の全体平均が69.9%であるのに対し、1億円台が77.8%、2億円台が87.5%、3億円以上が95.6%と、都心に多い高価格帯での契約がとりわけ好調だった。高級賃貸住宅9区の稼働率や賃料もコロナ禍で低下することなく、直近の24年第1四半期も堅調に推移している(図表)。

なお、新型コロナが拡大した20年以降、在宅勤務の普及などによりオフィス需要が弱含んだことも、オフィス以外の用途が複合開発で検討されるきっかけになったと考えられる。例えば、28年3月の竣工が予定され、東京駅に直結し高さが森JPタワーを超えるトーチタワー(千代田区)では、高層部に賃貸住宅が入ることが22年に決まった(当初は、オフィスやホテルなどがトーチタワーに入る計画だったが、住宅が追加された)。

こうしてみると、都心複合開発では引き続き住宅の供給が検討されると考えられる。都心における高級住宅に対する需要は、アジアなどの富裕層による投資や移住のための購入需要、新型コロナの収束に伴って復調している外資系企業のエグゼクティブによる日本赴任時の賃借需要など、海外需要も相応に占めている。こうした需要は円安メリットが意識され、為替の動向に左右されやすい。

都市未来総合研究所 主任研究員/丸山 直樹

週刊金融財政事情 2024年6月25日号

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